32<>2006/05/22<>桐の花<>
すっくと居住まい正しく
葉もつけぬまま咲く桐よ
丈高く天を仰ぎ
人の手に触れさせぬ高みから
うす紫の花弁を香らせる桐よ
ひとつずつ
くるくると舞い落ちた花弁を
指にとって眺むれば
切なく胸のつまる蜜の香に
激情が押し寄せて
立ち尽くす
立ち尽くす
<><><><><><><><><><>
31<>2005/09/14<>【紅い月】<>
激しく愛して紅い月になる
月の女神は
受けた辱めが恨めしくて紅くなったんじゃないの
擦れて爛れて熱を持っても
それが嬉しい自分に
気づいて恥ずかしいだけなのよ
とてもすき
<><><><><><><><><><>
30<>2005/05/26<>【甘いくちづけ】<>微かに震える吐息もろとも
やわらかで
あたたかい
君のくちびるを
食べてくれる
こんな気持ちにさせたんだから
その腹いせに
焦がれる想いを口移しに
注ぎ込んで
そして君を吸い取ってくれる
君が私を想う気持ち全部を
いつまでも
いつまでも
味わってくれる
<><><><><><><><><><><>
29<>2005/04/09<>【ウデマクラ】<>
きみの声がおでこあたりで聞こえる
くすぐたい
でもきもちイイ
脚も腕もからませて
そのままおやすみ眠りに落ちる
食べちゃいたいのにあまえたい
胸に抱くより暖かい
首までおふろに浸かってるみたい
なんでどうしてこんなにやすらぐ
きみのウデマクラから
夢があふれてとまらない
<><><><><><><><><><>
28<>2005/03/03<>【よーし、僕も!】<>
冬をおいたて
草木を目覚めさせ
さあさあと
カーテンを強引に引いて朝陽を入れる母さんのような
春の足音が聴こえる
バタバタと忙しなく
ドタドタと不躾な音をたて
名残を惜しむ砂糖雪を蹴散らして
にっこり微笑みながら
ぬくもり一杯のお茶碗を手渡す母さんのような
春の足音が聴こえる
ぬくたい毛布から出るのは辛いけど
楽しそうだな
嬉しそうだな
耳に障る音がガチャガチャ鳴っているけど
元気がでるな
勇気がでるな
よーし
それじゃあ僕も
バタバタと着替え
ドタドタと階段を降りて
バチャバチャと顔を洗ってみるか
ムシャムシャとご飯を食べ
ガチャガチャとランドセルを背負って
いってくるねー!
って
大声で言ってみるかな
今日は温かいや!
<><><><><><><><><><><>
27<>2005/02/08<>【すき】<>
すき
っていいたい
あなたが居てよかった
すき
って返してくれる
あなたで居てくれると
私はうれしい
それで充分
それで幸せ
<><><><><><><><><><>
26<>2005/02/05<>【鉋目】<>
鉢のかんなめに指を這わせているうちに
はらと涙が零れ驚く
いつもいつも自分と戦うように仕組まれたこの愛が
何処に行き着くのか私は知らない
知らないけれど苦しんでは一段登り
登って見渡せば生きる歓びにあたまが下がる
繰り返し繰り返すが頂上は雲の中
雪の釉薬が蟠る鉋目に指を這わせながら
祈るように彼を想いつづける
<><><><><><><><><><>
25<>2005/01/10<>【春】<>
きらきらとしたものが
鉄琴の音色のように
突然胸に降りてくる
川の水面にさざめく花風とか
異国の海に落ちる太陽とか
熱く焼けたアスファルトの粒子とか
落ち葉の照り返しとか
見渡す限りに積もった雪とか
わからないけど
そんなきらめきが
なぜだかわからないけど
突然降りてくる
切ないような
厳かなような
懐かしいような
わくわくするような
暖かい優しさのような
冷酷に切り捨てるような
お母さんの
悪くもないのに誰かに頭を下げて謝る姿や
誇らしげに凛と立ってる姿や
愛おしいのに心配顔で私を見る複雑な表情が
とてもリアルに思い出されて
思い出されて泣けてくる
突然思いっきり走りたいような
ぱったり倒れてじっとしていたいような
大声で泣きたいような
大声で笑いたいような
腹の下からふつふつと湧き上がって
漲ってくるエネルギーを少し感じて
春が来たんだなぁ
と
やっと今きづきました
<><><><><><><><><><>
24<>2004/11/24<>【自分からは言えない】<>
なんでも自分でできちゃうし
一人でいるのもへっちゃらで
優しくされなくもダイジョブだって
そんな風にくらしてたって
ホントは独りじゃいられない
あなたなしではいられない
気持ちが繋がってる妄想だけで
しばらく暮らしていけるけど
体はいうことききません
この唇をふさいでほしいって
この肩を抱いてほしいって
耳とうなじに息吹きかけてほしいって
肩紐を肌蹴させ
脇から腰へ掌を這わせてほしいって
自分からは言えない
そうしてほしいって、死んでもいえない
素直になれないけど
それがわたしです
<><><><><><><><><><>
23<>2004/11/18<>【鈍色の海によせて】<>
服も靴も化粧も下着もなにも要らない
ありのままの姿を
影もできず輝きもしない
ありのままの姿を
苦しみも哀しみも卑しさも快楽も飲み込んだ
ありのままの姿を
峻烈な風と
鈍色の海によせて
とかしてきざもう
この想いよ
彼に届け
<><><><><><><><><><>
22<>2004/11/07<>【晩秋】<>
百舌の声
野焼きの匂い
金色の陽射
色づいて毀れる柿の葉
毎年この季節に
落ち葉のカサコソに混じって囁きが聴こえる
「あなたの行くべき所へ行きなさい」
それが何処なのか
まだみつからないでいる
<><><><><><><><><><>
21<>2004/09/24<>【絵を描きに行く】<>
森の中 ひだまりの窪地
水のほとり
新芽が萌える深い峡谷
紅い橋のかかる湖
銀箔の海 穴のように黒い岩
石でできた街
真夜中の紅い三日月
木立に囲まれた翠の湾
風が吹き 白兎跳ねる碧海
白い壁 青いドア 紅いブーゲンビリア 黒服の集う街角
切り絵になった夕暮れ
きーんと冴え渡った街道
時の止まった遺跡
そうして
君の寝顔
<><><><><><><><><><>
20<>2004/09/22<>【私のために】<>
髪を洗おう そして綺麗に整えよう
爪を磨こう そして綺麗に染めよう
紅をひこう そしてにっこり微笑もう
風が髪をなぶったら 綺麗な指で押さえるよ
日差しが強く照らしても 眉を顰めず笑顔で応えるよ
誰かのためでなく 私のために
服を選ぼう 体のラインが美しく見える服
靴を買おう 歩くのが楽しくなる靴
バックを選ぼう 私らしい色のバック
誰かのためでなく 私のために
街ゆく人の視線はいらない
好きな人の好みはもう卒業
あなたのためでも 見知らぬ人のためでもない
私が気持ちよくいられる
美しい自分で居よう
雑に扱われてきた髪は よく頑張ってくれた
節くれだった指も よく働いてくれた
産み育みに形の崩れた腰も 偉かったよ
わたしは私のために
綺麗になろう
そしたら
大切な人にもっと優しくなれそうだから
大切な人を幸せにしてあげられそうだから
わたしは私のために
もっと綺麗になろう
<><><><><><><><><><>
19<>2004/09/02<>【晩夏】<>
いっぱいの海と まぶしい光に包まれて
思いきり抱き合った
君を確かめ 君に貫かれ 死んでもいいと思ったよ
真夜中の とろりと萎えた暗い海
紅い月に懺悔して 君の寝顔に見入ってた
死んだりするかと思ったよ
篭った地熱が
いつまでも噎せ返る空気をつくるように
君の放った白い焔が 体の芯から立ち昇り
いつまでも いつまでも
私を狂わせる
晩夏の灼熱さえ翳る
夜叉のような憑き物を
どうしてくれようか
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18<>2004/07/13<>【女】<>
女は恋をする
受け入れ
肯定し
未知な部分にとめどなく魅かれ
夢をみる
永遠と確からしさに幸せを感じ
未来を紡ぐ
女は恋をする
受け入れ
肯定し
カッコつけてるそのお尻に
男の子のカケラが付いてるのを見つけて
愛おしさを感じ包み込む
強引と我侭を許す自分に幸せを感じ
日々を積み重ねる
女は恋を失う
紡いできたもの
積み上げてきたものを
いっぺんに失う
それでも生きている
それでも笑っている
そして
また一から始めてゆく
はじめのひと紡ぎ
はじめのひと積みは男でも
紡ぎ終え
積み上げ終え
最期を看取るのは
女だ
一日を看取り
人を看取り
自分の最期も看取る
これで良かったと
安らかに自分を受け入れ
情け容赦なく命を終えるのも
女だ
<>.jpg<>90<>119<><><><><><><>
17<>2004/06/30<>【夏の記憶】<>
プールへ向かう道
延々と続くアスファルトに陽炎がゆれてる
ダンプの巨大なタイヤが真横をすり抜ける
埃まみれの素足にゴム草履
擦りむけがやっと直った足を
ねこじゃらしがくすぐる
チクチクする麦藁帽子
肩がリボンのムームー
咽の渇きと眩しい光でクラクラしてた
部活帰り
買い食い禁止でもジュースを飲まずにはいられない
汗でまとわりつく制服のブラウスもスカートも
まったくやりきれない
浜辺に出て波打ち際を裸足で辿る
火照った足裏がひんやりして嬉しい
水面に付いた月の光道を
歩いて渡れると想像しながら
辞書の入ったマジソンバックを肩に掛け直す
色濃く肉厚になった青葉が見える教室
強い日差しをでらでらと照り返す緑が
図々しいオバさんのようで憎らしい
制服のスカートを煽って風を入れながら
今年の夏祭りは好きな子と行けるかな
なんて事ばかり考えてた
電車待ちのホーム
電車が入って来た時だけ少し涼しくて
乗り込む時はむわっとした
取引先へ向かう道すがら
木陰がまったく無くて
靴の中まで汗をかいてた
働くってこういうこと?
灼けた砂浜に横たわり
オイルでべたべたの肌に砂がまぶさる
気持ち悪くて冷たい海に飛び込み
夕暮れまで浜で過ごす
太陽は傾き水は温み
潮風が妖しく肌をなぶる
この夏の夜は一日の終わりじゃない
浮き輪にビーチボールにカキ氷
日焼けオイルに日焼け止め
麦藁帽子に貝殻のネックレス
イカ徳利に大せんべい
ビキニに海パン星砂の瓶詰め
夏だけ賑わう通りは歩かない
<><><><><><><><><><>
16<>2004/06/27<>【君の中に入って】<>
君の目で観る世界を
君の頭に浮かぶ世界を
君の心で感じる世界を
どうか僕に見せて下さい
君の中に入りたい
君のすべてを感じたい
君の中の僕を見てみたい
僕のどんなトコロに惹かれ
僕のどんなトコロに失望してる
僕は君の心のどこにある
君の強さを感じてみたい
君の切なさを感じてみたい
溢れる想いと溢れる欲望
激情の嵐のただなかで
内側から君を感じたい
君が傷ついたなら
僕の癒しを君に渡そう
僕の想いで君を包もう
君の中の中に入って
幸せな君を感じたい
<><><><><><><><><><>
15<>2004/05/10<>【明日来るなら】<>
胸いっぱいの好きを持ってきて
胸いっぱいの切なさを持ってきて
どうしようもない欲望を抱え、
ぎりぎりの想いをポッケにつめて
独りでいる時にくちずさむ歌も
昨日見た海の色も
全部ぜーんぶなにも残さず
持ってきてね
<><><><><><><><><><>
14<>2004/05/10<>【眠るまで】<>
祈りを捧げた夕日を見送り
火を燈す
蒼い闇は笑い さっきのあなたの熱が
指先から流れ出す
火を点す
あなたが愛した膝を抱き 吐いた煙を薄暮に環す
道は無いけど怖く無い
火を囲む
照返しで見えるのは片側だけ
愛の意味をおしえて
繋いだ手は柔らかく すべての闇は味方
明日の意味をおしえて
どちらが先に眠っても
安らかなその寝顔にくちづけて
涌き出る暖かさにため息をついて
ふたりのいのちに感謝を捧げる
<><><><><><><><><><>
13<>2004/04/27<>【あまりにきれいな君に】<>
あまりにきれいな君に
触れようと 指を差し出せばスパークする
速く 速く 穢れたモノを吹き飛ばし
澱んだ空気を切り裂いて
あまりにきれいな君は 駆け抜けてゆく
立ち止まると恥ずかしそうにしてるから
観ているコッチが恥ずかしくなるじゃん
馬鹿ね!
好きですなんて
死んでもいえるか!
<><><><><><><><><><>
12<>2004/04/03<>【デコパージュ】〜晩春〜<>
人肌恋しいこんな夜は
月も早々西に傾いたこんな夜は
優しく甘やかしてくれた あの人を想おう
桜散る宵の小徑で
「いい季節になったね」 呟いた私に
「いい季節になったね」 そう繰り返してくれた
優しいあの人を想おう
海がみたいと 遠出して
新緑がみたいと 車走らせた
デタラメな私の言葉の
<次>をちゃんと用意してくれてた
壊れてしまいそうだった私を
そのままでいいんだと そのままがいいんだと
すっぽり包み込んでくれた
そんなあの人を想って
静かに眠りに就こう
<><><><><><><><><><>
7<>2004/03/07<>【デコパージュ】〜熾き火の龍〜<>
いったい誰にとめられる?
乳房の裏側に棲む 熾き火の龍を
思い出の黄金を寝床に
甘い夢を静かに呼吸していたのに
熾き火は灰に埋れていたのに
ああ、目を醒ましてしまった
白い灰の中 オレンヂの目をギラリと開く
貪欲な熱い体をうねらせて
新たな黄金をもとめてる
龍の焔が私の体を熱くする
龍の叫びが私の吐息を熱くする
春雷を呼び 嵐の中へと私をせきたてる
組み伏せても震えてもとめられない
龍に
滅ぼされてしまう!
<><><><><><><><><><><>
6<>2004/03/04<>【デコパージュ】〜ギター弾き〜<>
穏やかなのに 尖がってる
口から出せない心の模様
その指先で掻き鳴らす
切ないくらい繊細で
痛々しい程荒っぽい
君は世界一カッコイイ男
複雑なのに純粋で
ひろびろとした自由な心
ダイヤのように硬くて小さい
膨らみ怒張し 燃え盛った後は
無機質で乾いた響き
私の胸を熱くさせ
蜜の泉を溢れさせる
君は世界一カッコイイ男
愛器を奏でる君を
誰しも『私の恋人』だと思う
肯とも否ともつかない微笑は
自分を愛する熱のせい
理解っているのに
黒い炎が私を包む
君は世界一カッコイイ男
<><><><><><><><><><>
5<>2004/02/26<>【デコパージュ】〜生きる〜<>
君の涙を柔らかく吸いとって
僕は呪縛から解き放たれた
君の涙を柔らかく吸いとって
僕は悲しみの味を思い出した
君の涙を柔らかく吸いとって
僕の心に悲しみのいのちが宿った
宿ったいのちから白い翼が生まれ
僕らは翔べるようになる
悲しみのいのちを胸に抱き
暗い夜空につばさを広げる
君の瞳は輝き 僕の心は強くなったけど
君のでも 僕のでもない涙が流されるのを見るだろう
涙は白い翼に毀(こぼ)たれ
無数の銀の十字架となって突き刺さるだろう
君の涙を柔らかく吸いとって
僕は生きる意味のしっぽに触れる
<><><><><><><><><><><>
4<>2004/02/25<>【デコパージュ】〜螺旋〜<>暗い暗い青暗い空間を、時間の感覚なく昇ってゆく。
ねっとりと密度の濃い空間でありながら、きれいに透き通る不思議な闇。
そこいら一面の闇が、果てなく広いのか、筒のように狭いのか判らない。
浮いているようでもなく、押し上げられて居るのでもない。
ただ、ひたすら上へ上へ。
上?
ワタクシの体が縦になっているなら上なのかもしれない。
横になっていたとしても、頭のある方が上のように思う。
斜めでも、逆さでも、ワタクシにはそうとは判らない。
早くもなく、遅くもない。やはり時間の感覚は無い。
寒くもなく、熱くもない。
ワタクシの頭上にも、顔の周りにも、体の周りにも、脚の下にも、
ぐるりぐるりと蒼白くて細い、螺旋が巡っている。
螺旋には、星屑のような光の粒が無数に散らばっている。
螺旋の渦にいつ入ったのか知らない。
出口も見えない。
ワタクシの体は動かせないから、螺旋には触れない。
ワタクシの思念は螺旋の中にあるのに、
ワタクシは螺旋の外から、ワタクシを視ている。
ただねっとりと暗く、透き通った空間の中。
蒼白い螺旋に取り囲まれて、上へ上へと昇ってゆく。
頭の上でひとつ鐘が鳴った。
鐘の音は美しく、音叉のように、
ワタクシの周りをぐるりぐるりと取り巻く、細く蒼白い螺旋を伝って、
ゆっくりと下へ降りてゆく。
響きがワタクシの体の周りを巡る時、光の粒が鐘の音に呼応して光を増し、
芳醇で嬉しいナニカを齎(もたら)してゆく。
首から胸、腹、腰、腿、脚と、全身に嬉しいナニカと光を与えてゆく。
ワタクシの昇るのが早いのか、鐘の音の響きが早いのか、
それは下へ下へと降りてゆく。
螺旋の粒が光る時、重大な真理をワタクシに投げかける。
美しい鐘の音の響きと、それに呼応する光の粒には、
ひとつの真理が練り込まれているのだ。
真理の響きがワタクシの周りを巡る間、
真理の中身を理解できそうな気になる。
けれども、ワタクシは芳醇で嬉しいナニカを感じるので忙しい。
ワタクシの全身を巡り、最後に足先から抜ける時、
「あぁ、そういうことだったのですか」
「では、この嬉しさや芳醇さには、そういう意味があったのですね」
やっと重大な意味を持つ真理を掴まえて、
その名を口に出そうとする。
口を開いたまさにその瞬間、
次の新たな鐘が頭の上で鳴らされる。
新たなる別の真理を含んだ、美しい鐘の音が、
名を云わんと開きかけたワタクシの口に、
新たなる別の嬉しさや芳醇さを詰め込む。
名を云わなければ、真理は真理として産まれず、形を成さぬまま、
脚の下、届かぬトコロへと行ってしまう。
ワタクシの胸には、真理を取り逃がした念が残る。
初めて念の残った胸で、次の嬉しさと芳醇さを感じる。
次の新たな真理を含む、鐘の音の響きと光りが、
ワタクシの周りをぐるりぐるりと取り巻き、細く蒼白い螺旋を伝って、
下へ下へと降りてゆく。
ワタクシの胸には、念が残ったので、
嬉しさと芳醇さの感じ方が少し変わる。
今度こそ、足先から抜けてしまう前に掴まえたい。
それでも、嬉しさと芳醇さは容赦なく私を満たし、
残った念が私を焦らせる。
「この真理の名は」
口を開いた時には、また次の新たなる鐘が鳴る。
鐘の音以外はナニも聞こえず、ねっとりとして透き通る不思議な青暗い闇と、
ワタクシをぐるりぐるりと取り巻く、光る螺旋しか無い。
同じようにワタクシは上へ上へと昇り、
鐘の音はぐるりぐるりと下へ降りてゆく。
鐘が鳴るたびに、ワタクシの胸に残る念は膨らんでゆき、
感じる嬉しさや芳醇さを、溢れさせてしまう。
真理の名を云えずに念が残り、嬉しさや芳醇さを溢れさせて、
ワタクシの胸には、切なさと口惜(くちお)しさが生まれる。
それでも、また次の新たなる鐘が鳴らされ、
光る螺旋はぐるぐると下へ降りてゆき、
ワタクシは嬉しさと芳醇さを感じながら、真理の名を呼べ無いまま、
どんどん上へと昇ってゆく。
時間の感覚が無かったハズなのに、
ワタクシの中で膨らみ過ぎた念の為に、
今では猛烈なスピードで昇ってゆくように感じ始める。
ぽつん、ぽつん、と鳴らされていたハズの美しい鐘の音は、
切なさと口惜しさで、今や、ガンガンと鳴り響くように感じ始める。
ぐるりぐるりと巡っていた、響きと光は、
今では、ゴーゴーと音を発てて下へ飛ぶように過ぎてゆく。
嬉しさや芳醇さも、ワタクシの全身を駈け抜ける度に、
痛みさえ伴うようになる。
ビュンビュンと過ぎ、ガンガンと鳴り、ゴーゴーと足元から抜け、
ビュンビュンと過ぎ、ガンガンと鳴り、ゴーゴーと足元から抜ける。
ビュンビュンと過ぎ、ガンガンと鳴り、ゴーゴーと足元から抜け、
ビュンビュンと過ぎ、ガンガンと鳴り、ゴーゴーと足元から抜ける。
ワタクシの体は痛みで強張り、そのうち青暗い闇から、
目の眩むような真っ白い光の中へと、物凄い速さで、
弾けながら一気に飛び抜けた。
目を開いても、まだ足元ではゴーゴーいう流れが続いている。
体は強張り、息をするのがやっとだ。
大音響で鳴り響いていた鐘は鳴り止み、
重力で濃くなった空気の無音に、耳が痛む。
ただ、胸に残った無念と悲しみと口惜しさだけが、
全身を満たし、
ワタクシは大声を上げて、泣き喚いた。
<><><><><><><><><><><>
2<>2004/02/19<>【デコパージュ】〜今でいっぱい〜<>聡(さとし)のペニスは巨大だ。
唇を舐め合って、舌を絡みつかせ、流れ出る唾液を吸い合うと
もどかしく服を脱ぎ散らかし、
裸の胸を押しつけて、キツクキツク抱き合った。
はぁはぁはぁはぁ。
あんなに焦れた相手と、今裸で抱き合ってる。
現実の聡の匂い。甘ったるい体臭。
苦しいほど熱い体。見た目よりも柔らかい皮膚。
この後どんなふうに私を弄るんだろう。
聡の指と舌はどんな動きで愛撫を始めるんだろう。
私のうなじや乳房はどんな慄きを味わうのだろう。
鼓動が早い。じわりと熱いモノが会陰に零れる。
手先が冷たい。狩りをする獣のように、静かに待つ私。
さあ、どうしたいの?あなた流のセックスに、いくらでも感応してあげるよ。
雌犬の視線を受け止めて、聡の端正な顔が歪んだ。
ベッドに対座してペニスを虚空に突き出したまま、
戸惑った情けない顔。両肩を掴んだ手が動かない。
願い求めるような目つき。
「どうしていいのか・・・。」
え、なに?どゆこと?
不信ビームが届いてしまう前に、瞼をきゅっと閉じて、
逞しい肩につける。
ココで童貞のカミングアウトなんかされたくない。
絶対に聞きたくないからね。
今は言わないで。
大丈夫。あなたは彼女と別れて、セックスが久しぶりだから、
私を買かぶり過ぎて緊張してるから。
画像の中の私を何度も犯し、射精してきたのだから。
だから、現実の今をどうしていいのか解らないだけ。
そう。
大丈夫、落ちついて。
こうして肩を舐めてあげる。
右手の指も一本ずつ口に含んで、舌を這わせ、唇で生暖かくしごいてあげる。
ほら、エロいでしょ?
切なげな聡の顔。最高にセクシー。
ね、我慢できなくなってきたでしょ?
さあきて、聡のやり方で狂わせてよ。
待ち合わせの場所から随分離れた改札で、
太い柱に寄りかかる聡をやっとこさ見つけた。
一目みただけで、聡と判る。
どうしよう。声をかけるのが自分になるなんて。
半径5m内にさしかかると、見えない熱線にあたって
頬は火照り、心臓がバクバク言い出す。
なんて声かけよう。
あぁ、無理だ。聡は私に気付かない。
綺麗な顔立ち。恥ずかしい!見られるのが苦痛。
思いきって、ちょんと腕をつつき、
そのままくるりと反対を向く。
真正面からのリアクションは直視できない。
逃げてしまいたい衝動と戦いながら、聡がこちらへ来るのを待つ。
「初めまして」
「初めまして。やっと会えたね。」
継ぐ言葉も見付からず、恥ずかしいからすぐに歩きだす。
どくどくいう鼓動に合わせて、同じ文句が浮かぶ。
(ね、ダメでしょ?これが現実の私だよ。無理でしょ?)
人混みを避けるために、自然と手を繋ぐ。
聡の手は柔らかい。そして暖かい。
私の手は冷えて、汗ばんでる。
今にも走り出しそうな勢いで、改札を出る。
人ごみは嫌いだ。
外へ出ると、ぬるい海水に飛び込んだみたい。
陽射は強く、動きが緩慢になる。不思議な感覚。
そっか、明るい陽射の下で話すなんて無かったもんね。
モニターに向う時は、カーテンで日光を遮るもん。
日焼けは嫌だ。
でも、お花見するんだから、いっぱい歩かなきゃ。
実際に会ってみれば、甘い夢は現実が壊してくれるだろう。
そう思ってた。
半分は、それで私も諦めがつくし、もう半分はがっかりして悲しむだろう。
傷ついて悲しくても、私はオトナ。
それはそれで甘美な思い出になるだろう。でも、現実は見せなきゃね。
信号で足を止め、聡の顔を正面から見つめる。
悲しみは早く訪れた方が、傷は浅くて済むよ。
さ、頑張れ!私。
「ね、がっかりしたでしょ?これが現実の私だよ。どう?」
「いいや。想像通りだった。綺麗です。それより、俺は?」
「想像より、現実のキミの方がずっといいよ。」
キミも不安だったの?そんなの信じられないよ。だって、だってね、、、。
普段歩かない私と、ほとんど寝てない聡。
今が八分咲きの有名な桜の木まで、まだダイブンある。
「花見は諦めて、カラオケしようか。」
ダルそうな聡を見て、ゆっくり話しのできるトコロへ移動することにした。
「舐めて」
仔犬顔で、無骨に突き出した巨大なペニス。
ハナっからフェラさせるんだ・・・・。
自慢のペニスで興奮させてるつもり?
私の緊張をほぐす愛撫は無し?
ストローで吹かれた石鹸水の泡みたいに、
情けない気持ちがもこもこと膨れてく。
吹くのを止めれば、コレ以上は膨らまないよね。
ふーん。いいよ。一回目は舐めてあげる。
膨らんだ憐憫をさっさと追っ払って、股間に向う。
太さも長さも充分過ぎる、血色の無いペニスに手をかけると、
ベッドの下に降りて額ずき、聡の睾丸をソフトに舐め上げる。
片方ずつ丹念に舐めて、仔犬顔を見ながら2つとも口に含む。
ちょっぴり娼婦な気分。
気持ちイイ?頬張ってる私の顔、ぶさいくじゃなぁい?
竿を下から上へ、横笛吹いてもう一度下から。
細く緊張させた舌先で丹念にカリをねめ廻す。
どう?堪らないでしょ?
センター街の横から、駅に向って真直ぐ歩く。
空の薄青が地上に降りて、電飾に触れた部分が、
つるりと水っぽく溶け出してる。
人の顔がはっきり見えない代りに、ネオンが目立ち始めるこの時間は、
とても歩きにくいんだ。
家路を急ぐサラリーマンや兼業主婦は一直線。
夜と共にやってくるナニかを期待する子供達には、参道。
これから出勤する顔は、薄青いゼリーの中で一際鮮やかだ。
人の流れを全体で眺め、大股で歩きながら交差点を渡りきる。
早く帰らなきゃ。
私も時間との戦いだ。
ステンレスの腕時計は5時を廻ってる。
渋谷から横浜まで30分。乗り換えて買い物して、、、。
エプロンを掛ける頃には、6時半だ。
駅前スーパーの商品棚を、最短で巡るコースが目に浮かぶ。
今の私には用済みの街からずぶりと抜け出して、
改札を通った。
自分の居場所。規律と清潔とくつろぎがあるのは家だけだ。
私はソコで必要とされている。
急行電車に乗り込み、ドアの前に立つ。
久しく満員電車に乗っていないから、他人と密着するのは嫌だ。
時間一杯まで吸った涎の匂いや、ホテルのボディーソープの匂いを立ち昇らせて、
おや、と他人の気を引くのはまっぴらだ。
車窓に映った自分の顔を見る。瞳は切なくまだ熱っぽいのに、
頬に張り付いてる疲れにがっくりさせられる。
ずっと以前も、こうして車窓に映った自分を見てたっけ。
十代。自分の居場所が探せない時の繁華街は友達。
窓に映る顔は子供なのに、生意気そのものの挑戦的な目。
二十代、社会と繋がる自分が誇らしい。
窓に映る顔は危うく、満足気な目。
美也からのメールで現実に引き戻された。
昼間留守電にしていたせいか、少し棘のある文面。
気の合う仲間と、来週ハタ織に行く約束の件で、
予約を入れてくれたという。
この頃はパスが多いから、今度は行こう。
車が海沿いに出る頃には、食欲も性欲もギリギリな状態になっていた。
それでも海の青さと光の銃撃を受けて、私の胸は沸き立つ。
すぐにでも車を停めて砂浜に駆け出したい。
とにかく落ちつける場所にと、ハヤる聡に促されて、
予定していた駐車スペースに車を滑り込ませる。
岬に建つホテルの部屋からは、海と空だけを深呼吸できる。
約束通り下着を着けないままのワンピース。
裾を足元から剥がれると異様に恥ずかしい。
なんだろう。この恥ずかしさは。
素っ裸でいるよりも、もっと露骨だ。
聡のズボンも脱ぐよう促して、これでおあいこ。
昼日中、空と海に照らされて両足を広げると、羞恥の雨に打たれる。
舌が触れるその前から、私は溢れる寸前だ。
舐められてる間中、掌で顔を覆う。
餓えも乾きも、セックスの前ではダンゴ虫同然。
勝手に丸まって、コロコロとベッドの足元に転がり、
私達はお構いなしに求め合った。
東京駅構内の新幹線改札前。
雑誌や地図、読みきりの官能小説類がヒラ積みされている書店。
美しく陳列したところで、1時間に何十人もの手が、
ごちゃごちゃと混ぜていくのだろう。
垢じみた感じの、この書店の前で待ち合わせする。
狭い店内通路は、顔と同様にくたびれた背広の熟年営業マンが、
これまた草臥れ切った肩掛け鞄で、他の客を押し退ける。
車を運転をしていても、マナーの悪るさが鼻につくのは、
熟年以上のこの手の男達。
狭い道路だろうと、一時停止だろうと、譲らずに突っ込んでくる。
相手が女とみると、譲らせるのがアタリマエらしい。
余裕無いのねぇ。反射も鈍いクセに。加齢臭ぷんぷんじゃん。
どんな家庭を背負ってるのか、私の知ったこっちゃない。
ただひたすら男として、人間としてカッコ悪い。
道端の汚物に出くわすと、その残像をいち早く脳裏から追い出すように、
書店から離れる。
近眼の聡がどこから現れるのか、そのことだけに集中することにした。
目隠しをして歩いている
おぼつかない
不安だけど 目隠しはハズさない
声のする方へ 私を暖かく包む空気が移動する方へ
赤ん坊みたいに すがりたくて歩く
疑心暗鬼と 見えない世界への嫉妬
しゃにむに 拳骨を振りまわしたり
キーキー泣き叫んでみる
立ち止まって 蹲ってしまいたい衝動
それでも目隠しはハズさない
日光みたいに 明るく暖かい方へと 導かれている間は
道はすっかり逸れている
手ぇの鳴ぁる方ぉへ
たまにしか触れられない柔らかさ
性と生への執着が 私の背中を押す
純粋な暖かさと 信じることだけが頼りで 自分さえ見えない
甘美な怠慢に 身を任せ続ける
「もう、ダメぇえええ!」
何度も何度も、抉るようなピストンが続く。
一番奥が軋む。肩を掴まれて、ぐっと挿し込まれる度に、
女性ホルモンと、潤滑液がドっと分泌される。
落とし穴に落ちるように突然脱力し、膣内が膨れあがる。
それでも聡の腰はペースを緩めない。
腰が上がるたびに奥で一回、膣口で一回、
カリが膣壁に引っかかって、快感神経が漏れなく刺激される。
体全体が膣口から裏返ってしまう。
目の前の聡の胸がぐにゃりとマーブルになって、
口から叫び声が出る。
自分が叫んだ感覚は無くて、遠くの方から聞こえる。
純白の緞帳が一気に降りて、足先から骨盤の内側、
手指の先まで温かいモノが巡る。
腿の付け根から起こる、小刻みな痙攣が止まらない。
真冬なのに全身汗まみれでぬるぬるしてる。
こんなに一生懸命セックスしてる自分達がおかしくて、
くすくすが止まらない。何度も何度もキスをして、抱き締め合う。
息苦しくて、寝返りを打ちたくなるような、熱い聡の胸。
母親の胎内に居る時は、こんなふうに暑苦しかったのかな。
聡の胸に憩いながら、ハタと突然気付く。
自分が迷い込んでいた迷路の、なんと小さかったことか。
まってまって!なにかを掴まえられそう。このまま、そのまま。
聡の体温と、私を貫く白い焔、他愛の無い笑い、
聡と歩く人ごみ、昼寝の腕枕、途方も無い距離と時間、
見えない明日、聡の向こう側にだけ見える景色、過去と未来、
聡の目覚めを待つ自分。聡の我侭。
みんな好きになってる。
目の前の視界が、バリバリと力強く広がってゆくのが見える。
私はココに居る。聡の未来に許す限りの愛情を捧げよう。
私はココに居る。私の保護と責任を必要としている者達に、
持てる全てを捧げよう。
聡に流れる血が、小さな私にやっと命を宿したんだ。
唐突に「今」でいっぱいになって、一人で爽やかに微笑む。
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